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プロス・ヘン(一へ向ける思惟)

およそプロジェクトプレーヤー間の関係性の中で現象、あるいはその系でしか現象しえない建築というものにおいて、望ましい建築を実現したいと思う設計者の欲望は、実際にお金を出す発注者(お客さん)に大きく左右される。そういう意味において、お客を選べる大建築家はともかく、一般の設計家に自分の理想とする建築を実現したいと切望する(これはエゴでもある)ことは、ほとんど現実的でないことになる。つまりは、世界的に認知されうるくらいに権力と人気を得た建築家ならともかく、一介の建築家カブレ(ほんの一握りが大建築家なら、その他の全員)には、本質的な建築に近づくことさえも許されないのかもしれない(もちろん、発注者に思いもかけず恵まれた場合を除く)。

そもそも、第一の前提を踏まえたとき、建築は建築家個人の力量のみで現象することはありえないのだから、大建築家にならなくとも、彼らと協働する他のプレーヤーになればよい。そう、理想とする建築を目指すために世界一良い発注者になればよい。これは、自らの小さい住宅でもかまわないし、コンサートホールや美術館などであってもよいのだ。発注者に実力がありさえすれば、建築家とのコラボレーションによる相乗効果で、およそ個人で創造するよりもすばらしいものが出来上がるに違いない。

世界中の建築生産において、発注者が実力を高めるだけで、相当な問題が解決されるのだ。それには、建築家やエンジニアたちと対等にやり合えるだけの、あるいはそれ以上の実力と勉強が必要であることは言うまでもない。

  by gstomach | 2004-10-20 23:50 |

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